ヒーロー奈落落ち

 

それは　午後、家で片付けをしていたとき

ピシッ

と何かがはじける音がしたので　なんだろう？　と玄関に向かったら
リリーーーン　と電話が鳴った。

瞬時、いやーな予感がして受話器をあげると　間髪入れず白熊が言った。

「　診療所の電話を教えてくれ、女医の携帯に電話しているけれど出ないから。」

「　ﾅﾆが　起こったの？　」

「　ヒーローが　挟まれて潰された。命に別状はないけれど、女医と連絡取りたいから早く　」

ﾅﾆ？

ヒーローがはさまれて　つぶされた、だと？？？？

とりあえず電話番号を教えると、電話はがっしゃんと切れた。

何かとんでも無いことが起こったことは分かったけれど
生きていることは確からしく、しばらく時間を置いてから白熊の携帯に電話をかけると
案の定、診療所に向かっている車の中だった。

「　で、ﾅﾆが起こったの？　」

「　　だから　挟まれて　潰されたんだよ！　詳しいことは後で話すから！！！　」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それじゃわからーーーーん！！！！！

「　ヒーロー、鳴いてる？　痛がってる？」
「　・・・・いや、鳴いてないけれど、オレが泣きたい　」

診療が終わったら　電話をすぐに頂戴ね、と約束をとりつけ
電話を切ったけれど　相変わらず　ﾅﾆが起こったのかよくわからなかった。

時々、白熊の仕事場にヒーローが同伴するときがあって　今日は朝から連れて行っていた。
だけれど同伴するといっても　事務所の柵の中でおとなしくしていたはずだ。
柵から出ていて、貨物の下敷きになった？　
クレーン車や行き来するトラックに轢かれた？？？

いろんな予想はできるけれど
意外に　緊迫感がわいてこない。
こんな感じの時は大丈夫。
きっと大けがに繋がらない程度で済むだろう　　と自分に言い聞かせ
残した仕事を片付けていると

白熊がヒーローを抱えて帰ってきた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　電話はどうしたよ？

腕の中のヒーローは　息がぜいぜいしていて　いかにも病人風。
見上げる眼にも力が無く、ぼんやりと私を見あげている。

でも変な風に腕も足もまがっていないし、包帯も巻かれてない。
何より生きてる！

「　で？　ﾅﾆが起こったのよ！　大丈夫なの？　」

詳しく聞いてみると。

白熊の仕事場には　約8M近い穴があり、そこに引き裂いた繊維をどんどん落としていって
最終的に穴が一杯になったら　一気に上と下から圧縮し、100ｳﾝキロに繊維をまとめる機械があるのだけれど

その穴にヒーロー、落ちたらしい。　

穴の中で　蟻地獄のようにズブズブと繊維の中に落ち込んでいき
助けを求めて叫んだところに繊維の綿がどんどん入り

今度は　下と上から　圧縮された、とのこと。

白熊がすぐに気がついて　圧縮された荷を解き放ち　真ん中からヒーローを掘り出して
口から繊維を取りだして・・・・　息を確認して　それから女医にかけつけたと・・・・

潰されたってこのことね。。。。
数トンの圧力で・・・

お腹に管を通して　調べた結果　内蔵はどこも破裂していず
骨にも異常なし。　

奇跡的に無傷が判明

「　お前は　本当にヒーローだよ。。。　」

と言う白熊は憔悴顔。

細かい繊維を大量に吸い込んだので　息がしづらいことと
（　吐き気を催すけれど　飲み込むヒーロー。　出せ！　）
一連のことにショックを受けて　動きも曖昧、筋肉痛で横たわっているけれど

5体満足のヒーロー。

その晩は　白熊のベットの近くに寝床を寄せて　寝させてあげました。

ヒーローのため、というよりは　ショックからやはり立ち直れない白熊のために。爆

 

翌日の今日は
ずいぶんショックと体の痛みから解放されてきたようで
顔つきがしゃんとしてきて、お昼頃にはテーブルに向かってジャンプできるぐらいに回復してきたけれど

それにしても　本当に無事でよかった。
どう考えても　いくつもの幸運に恵まれて　生き延びてくれたヒーロー。
小犬で体が柔らかかった、小さかったことが繊維とともに圧縮されても大丈夫だったことに繋がったのか・・・
神様に無事を感謝してもしきれない。

私と白熊で　べたべた。ちやほや。牛乳上げ放題、なで放題で
結構満足げなヒーロー。

けれど白熊がショックから解放されるには　まだ数日かかりそうです。。。。

 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　新しい寝床で静養中のヒーロー。